ソリューション

レーザシステム

電動モビリティの普及で需要が増すキャパシタ、アルミ電極のレーザ溶接による小型化・コストダウンの両立

EUは先ごろ、地球温暖化問題に対応するため、2035年以降のガソリン車・ディーゼル車販売を禁止すると発表しました。内燃機関を用いるこれらの自動車に代わって、注目を集めているのが電気自動車です。一定距離の動力を得るために、必要な電力を蓄積するバッテリーは、充放電の際にエネルギーロスを生じ、充電時と同等の電力を放電することはできません。

一方でキャパシタは薄い金属片を多重化した構造となっていて、金属片と金属片の間に静電気の形で蓄電することができるため、バッテリーと比べ、数百万回以上の充放電が可能で、廃棄時に環境問題を引き起こす可能性のある重金属を材料に含まない、回路短絡(ショート)しても故障しないなどの理由から、キャパシタは電気自動車の動力源に採用されることが増えてきました。

  • 装置カスタム
  • 低入熱溶接
  • 品質の均一化
  • 自動化
  • 熱ひずみの低減

お客様の課題

  • 精密電子部品であるキャパシタの電極に使われるアルミは極小
  • 溶接難易度の高いアルミの安定生産がしたい
  • アルミは熱を伝えやすい金属のため接合部位以外への熱影響が出やすい

解決したこと、できること

レーザシステムによる溶接でキャパシタへのアルミ電極の導入と品質維持を実現
キャパシタの接合工程にレーザーが得意とする局所溶接により接合部位を極小化、局所溶接で接合部位以外への熱影響を最小限に抑え、「溶接モニタ」を導入することで溶接の不具合を自動検出し、全量ベースでの不良品チェック、品質確認に応用。加工ロット単位でのまとまった量の不良品が出る可能性を抑えてユニットエコノミクスの向上にも貢献しました。

電動モビリティの普及で需要が増すキャパシタ

EU は先ごろ、地球温暖化問題に対応するため、2035年以降のガソリン車・ディーゼル車販売を禁止すると発表しました。内燃機関を用いるこれらの自動車に代わって、注目を集めているのが電気自動車です。世界で初めて電気自動車が開発されたのは200年以上前で、その歴史の古さはガソリン車をもしのぎますが、航続距離の身近さから実用性に乏しく、長きにわたって世の中から存在を忘れられていました。一定距離の動力を得るために、必要な電力を蓄積するバッテリーが大きく重かったからです。

新素材を使ったバッテリーが次々と開発され、充電効率や電気容量は次第に改善されてきましたが、電気はその性質上、そのままの形で貯めることができません。バッテリーでは電気を化学反応で別の形に変換して充放電するため、変換の際にエネルギーロスを生じ、充電時と同等の電力を放電することはできません。そこで生まれたのがキャパシタです。キャパシタは薄い金属片を多重化した構造となっていて、金属片と金属片の間に静電気の形で蓄電することができるため、充放電効率がバッテリーに比べ格段に向上します。

特にバッテリーと比べ、数百万回以上の充放電が可能で、廃棄時に環境問題を引き起こす可能性のある重金属を材料に含まない、回路短絡(ショート)しても故障しないなどの理由から、キャパシタは電気自動車の動力源に採用されることが増えてきました。駆動部をエンジンからモーターにできることで小型化が図れ、従来型自動車では難しかった用途にあったモビリティ開発の可能性も広がります。人の命を預かる移動体に使われるキャパシタ開発の陰で、住友重機械の技術がどのように役に立っているかをご紹介しましょう。

コストダウン、軽量化、不良品減少、省人化を同時に実現するレーザー溶接

キャパシタの材料、活性炭繊維で作られた電極、それらの間に挟まられたセパレータ(電解紙)などで、それらが多重に巻物のように構成されていますが、電極にはアルミが使われることもあります。アルミは薄くできて誘電率も高いため、小型化・大容量化が求められるキャパシタには理想的な素材といえます。しかし、柔らかい金属なので加工はしやすい金属である一方、同時に不用意に変形しやすい、熱を伝えやすいといった加工過程では不都合な性質も兼ね備えています。

軽量化と品質安定の観点から、キャパシタの製造過程においては、レーザー溶接は必要不可欠な技術になっています。レーザーが得意とする局所溶接により接合部位を極小化することで軽量化に成功、また、局所溶接で接合部位以外への熱影響を最小限に抑えることができるため、精密電子部品であるキャパシタ全体の品質維持にも貢献します。代替可能な接合手段が見つけられないキャパシタへのアルミ導入は、レーザー溶接がそれを可能にしたと言っても過言ではないでしょう。

また、住友重機械では、溶接状態を光でとらえ常時監視・履歴管理ができる「溶接モニタ」を開発・商品化しており、これをキャパシタの接合工程に導入することで溶接の不具合を自動検出できるので、サンプル抜き打ちではなく、全量ベースでの不良品チェック、品質確認に応用が可能です。ロボットがキャパシタを一個ずつ自動的にレーザー溶接を施すため、加工ロット単位でのまとまった量の不良品が出る可能性を抑えることができ、ユニットエコノミクス(ビジネスの最小単位における収益性)の向上にも貢献します。

小型化、軽量化、性能向上でキャパシタの用途はさらに広がる

従来のキャパシタはバッテリーほどのエネルギー容量(単位容積あたり充電・蓄電可能な電気容量)を持たないものの、電圧や電流を安定・調整するコンデンサ同様の用途を備え、電気の瞬断が許されない病院、データセンター、精密機械工場などで、停電が起きた際に自家発電装置が運転を始めるまでの〝つなぎ〟のバックアップ電源などとして多用されてきました。小型化・大容量化でバッテリーに代わるメイン電源として使われるようになり、電気自動車の動力源に採用されたことは、この技術革新を象徴する動きと言えます。

住友重機械では、キャパシタの品質安定のため、レーザ出力、(反射光の)波形分析、速度、スポット径、アシストガス選定など最適な溶接条件出しで、キャパシタの製造メーカー様をサポートさせていただきました。また、こうしたキャパシタを新しい電気自動車やモビリティに採用を検討するメーカー様の性能試験のためにも、レーザー溶接を使って製造されたキャパシタの評価テストなども間接的に支援させていただいた経緯があります。

これまでのキャパシタの数百倍以上の容量を持ち、短時間で充電が可能なスーパーキャパシタやウルトラキャパシタといった新種が発表されるなど、この分野は成長が大変著しい市場です。キャパシタは電気自動車やモビリティのみならず、建機、エレベータ、産業機器など用途は多分野に拡大することが期待されますが、一方で、その製造工程ではさまざまな技術的な課題に直面することになるでしょう。そんな場面で、住友重機械が提供するレーザ溶接のソリューションがお役に立てると考えています。

キャパシタの期待ができる応用分野

  • 電気の瞬断が許されない病院、データセンター、精密機械工場
  • スーパーキャパシタやウルトラキャパシタを使った建機、エレベータ、産業機器
  • 内燃機関に変わって電力を使った電気自動車やモビリティ分野